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小田恵 校長先生へのインタビュー


経験や対話から学ぶことも大切

男子校・女子校も教育多様性の一つ

〔22.9.8号より全文掲載〕



京都府内では男子校が2校だけになりました。

小田: 少子化が進む中、共学化について率直なお問い合わせをいただくこともあるのですが、近い将来その予定はありませんとお伝えしています。

 多様性の社会なので「男子だけ」というのはどうなのか、とお考えの向きもあろうかと思いますが、多様性の社会だからこそ色々な選択肢を残しておく必要があるのではないでしょうか。女子だけ、男子だけの学校、共学校、あるいは制服についても色々選べる学校、というように多様な中から自分で選べる方がよいと思います。

 今だからこそ男子校でいることの価値がある、と申し上げたいですね。その価値が具体的に何なのか、答えはすぐに出ないかもしれませんが、ただ、「男子校だから出来なかった」ということにはならないよう、心して取り組むことが重要と考えています。

 例えば「男子校だから女性の気持ちがわからない」「家事ができない」などという話にならないように。そのためには女性の抱えてきた問題なども積極的に学ぶ必要があるでしょう。男性と女性との違いを知った上で、相手を認め、自分を振り返ってみて、さて相手は何を求めているのかと考える。ジェンダーの問題も、そうした「人としての基本」に差し替えていければと思っています。

 私は長年、本校の国語科教員として勤務してきました。今回、本校では初めての女性校長となりましたが、生徒たちからは「女性か男性かは関係がない。それを言うこと自体問題では?」との発言があったと聞き、心強く感じています。


コミュニケーション,議論の大切さ


さて、新指導要領のもとで高校に情報科が導入され、大学入学共通テストにも科目として加えることが検討されています。

小田: 本校では、高校1年・2年ならびに中学でも情報について学んでおり、現段階で不足はないと考えています。大学入試での利用など国の方針が固まった段階で、土曜講座での選択や、教科内容を一部中学校に下ろすなど、私立中高一貫校のメリットを活かした対応も考えられると思います。

 ただ私自身、文系の人間でもありますのでピント外れなことを申し上げているかもしれませんが、プログラミングやITの世界というのは、半年で状況が変わってしまうほど発展のスピードが速いわけです。原理を知ってツールとして使えるようにするのが目的ならば、その先は大学入学後、日進月歩の技術革新に対応した形で学んでいく方がかえって望ましいと思うのですが。例えば、医学部に進学する人たちも、日進月歩の医療技術を、いわば大学入学後から学んでいくわけですから。

 むしろ情報の導入に伴って、現代の社会情勢や世界の動向を深く知る上で必須となる教科に偏りが生じないかが懸念されます。歴史や古典などとは違い、日々移り変わっていくものに対して、一体どこまでのものを求めていくのか、その点が不明なままこの問題を進めても、教育現場の戸惑いは消えないでしょう。



一方、大学を中心に学力低下問題が言われて久しいですが。

小田: 何十年も前から同じことが言われてきました。教育レベルは上がっているはずなのに、なぜそういう話になるのか、考えてみますと、今の時代はモノや情報が溢れ過ぎ、何かを追い求める気持ちが昔に比べて薄くなっているような気がします。

 “ハングリー精神”などという言葉も聞かれなくなりました。コロナの影響で、大学でもオンライン学習が一般化していますが、大学で最も必要とされるのは、実は対面でのコミュケーションであり、議論することだと思います。その中で考えや知識が深められていくものなのに、今はお互いが分断された状態になってしまっています。

 一方で、発言を巡って身の危険を感じるなど、本音が言いにくい状況もあるようです。公の場で発信をし、叩かれながら考え直していくという経験を通して人は育っていくものですが、そうしたことをとても恐れる気持ちが若者の中にもあるのでしょう。

 昔に比べて知識や学力は今の子どもたちの方が優れているはずなのに、それを活かす経験が不足しているのだと思います。「安定」や「やすらぎ」だけが求められ過ぎている風潮も気になります。



“失敗体験”を成長の糧に


体験から学ぶことが必要だと ――。
小田: 本校では、滋賀県北部の琵琶湖畔で夏休み前、中学1年生が2泊の学習合宿を行います。ここ数年は自粛してきましたが、今夏は地元の方々にもご協力いただき、農業体験なども組み入れた合宿としました。あいにく猛暑日で農業体験はできませんでしたが、森と水との関係について学び、ディスカッションの機会も設けました。フィールドワーク的な行事を今後も各学年で取り入れ、クラブ活動や個人での活動を含めて支援していきたいと思います。

 また、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など海外の大学訪問が本校でも人気のプログラムとなっています。現在、コロナによる受け入れ休止状態が続いていますが、改善されれば早々に再開の予定です。

 当初は、英会話に自信を持つ学力優秀な生徒たちが意気揚々とプログラムに参加したところ、「英語は通じるけれども話す内容が不十分」と指摘され、悔し涙で帰国したこともありましたが、それでも皆ずいぶん強くなって帰ってきたなと感じたものです。

 命にかかわるような失敗はもちろん避けなければなりませんが、バーチャルではないリアルな“失敗体験”は、間違いなく成長の糧になってくれます。春休みには希望者による海外語学研修も実施しており、今後さらにこうした活動を充実させていきたいと思っています。



大学進学に関して ――。
小田: 本校では、卒業生による「OB講演会」が定着し、先輩たちが自身の進路選択や在学中の思い出などを、飾らない言葉で後輩たちに語ってくれます。毎回大変充実した内容で、ありがたく思います。

 生徒たちには、自ら進路の選択ができるように、そして大学、社会に出てからさらに輝きを増していく、そのための中高6ヵ年一貫教育であることも感じ取ってほしいと願っております。



本日は、ありがとうございました。<文中敬称略>


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