教育時報社

TOP特定商取引法に基づく表記プライバシーポリシーお問合せ

地方の時代
「わが府県の教育改革」

 
きょういく時報」24.1.18号掲載>


 「『絆』を深め『在りたい未来』を想像する力」の育成について

 兵庫県教育委員会 藤原 俊平 教育長
 
 本年は、本県の教育基本計画である「第3期ひょうご教育創造プラン」が、令和5年度末で計画満了となり、第4期プランがスタートする年となる。

 変化の激しい時代にあって、想定外の事象とも向き合い対応していくためにも、子どもたち一人一人が、自ら「こういう自分になりたい」「こういう社会にしたい」という「在りたい未来」をしっかりと描き、その上で、主体的に他者とも協力・協働しながら、自分が描いた未来の実現に向けた課題を発見し、新たな価値を創造する力を育成していくことが求められる。

 また、2025年1月17日で阪神・淡路大震災から30年となる。第4期プランでは、「絆を深め、在りたい未来を創造する力の育成」を重点テーマに掲げ、これまで以上に学校・家庭・地域・行政等が連携・協働して社会全体で子どもの成長を支えながら、新しい時代の教育を切り拓いて行きたいと考えている。

 一方、不登校児童生徒数は毎年増加傾向にあるとともに、コロナ渦による生活環境の変化等もあり、要因の多様さが浮き彫りになっている。このような状況を踏まえ、昨年、多様な不登校の課題に対して、学校、地域、支援関係機関、教育行政が相互に連携し、全県が一丸となって総合的に取り組む「ひょうご不登校対策プロジェクト」を立ち上げた。

 校内サポートルームの機能強化、不登校に特化した組織の設置等の学校・教育行政の取組をはじめ、関係機関との連携強化、地域との連携強化など、学校内外において個々の児童生徒の状況に応じた支援をパッケージで展開していく。

 義務教育では、「心の教育」として本県が全国に先駆けて行ってきた兵庫型「体験教育」(小学校3年生の「環境体験事業」、小学校5年生の「自然学校」、中学校2年生の「トライやる・ウィーク」)の推進、コミュニティ・スクール等の「地域とともにある学校づくり」の推進、「ひょうご学力向上プロジェクト」や兵庫型学習システム等による「主体的・対話的で深い学び」を推進する。

 高等学校では、「県立高等学校教育改革第三次実施計画」に基づき、①県立高等学校の魅力・特色づくり、②県立高等学校(全日制)の望ましい規模と配置、③入学者選抜制度・方法の工夫と改善に取り組む。

 昨年12月には、2025年度の発展的統合に向けた実施計画を公表したが、今後とも、保護者や生徒、地域の方々に丁寧に説明しながら準備を進めていく。

 特別支援教育では、「特別支援教育第三次推進計画」が、令和5年度末で計画満了となり、第四次推進計画がスタートする。

 連続性のある多様な学びの場における教育の充実(縦の連携)、連携による切れ目ない一貫した相談・支援体制の充実(横の連携)の一層の推進に取り組む。

 教員不足対策も積極的に展開する。教員志望者の確保に向け、今年度の採用試験日を6月15日へ前倒しするとともに、大学3年生等も受験の対象とする。

 その他、「特別免許状授与を前提とした特別選考の拡大」や「教員免許状取得期間猶予の付与を前提とした特別選考の実施」など多様な人材の確保にも取り組んでいく。

 将来を生き抜く力を育む教育をめざして

 大阪府教育庁 橋本 正司 教育長
 
 昨年3月、第2次大阪府教育振興基本計画を策定し、4月には同計画に基づく事業計画がスタートした。

 第1次計画に基づき、学びの「基礎・基本」の確実な定着等、これまでの取組みを継承していくとともに、グローバル化に対応するため小・中・高を通じた英語教育の推進や自ら問いを立てて主体的に考える力を育む探究活動の充実等、子どもたちが将来を生き抜く力を身に付けるために必要な内容を取りまとめている。

 昨年8月、大阪の全ての子どもたちを対象に、高校等の授業料を完全無償化する制度案を決定した。所得や世帯の子どもの人数に関係なく、自らの可能性を追求できる社会の実現等に向けて、令和6年度の高校3年生から所得制限を段階的に撤廃し、令和8年度には全学年を対象とした制度の完成をめざす。

 一方、令和4年度の国の問題行動・不登校等調査の結果、全国の不登校者数が異例のスピードで増加し、いじめの認知件数や暴力行為の件数も軒並み過去最多となり、本府も全国と同様に増加している。

 チーム学校を中心とした包括的な支援体制を構築し、早期から一人ひとりに応じた多様な支援ができる取組みをより一層強化していく。

 府立高校では、不登校に加え、障がい等により配慮の必要な生徒や日本語指導が必要な生徒の増加等、生徒が抱える課題が顕在化するとともに、生徒や保護者の学びに対するニーズも一層多様化している。

 また、普通科の高校については、国の普通科改革の動きを取り入れながら魅力向上を図る必要がある。

 このような状況から、現在、大阪府学校教育審議会において、府立高校改革の具体的な方向性等について審議を進めており、今年8月に予定されている答申を踏まえ、各校の役割や特色を活かした生徒等のニーズに応える学校づくりや選抜制度のあり方について検討していく。

 教員の力を十分に発揮するため、働き方改革を進め、長時間勤務を是正し、教員の負担を軽減していくことが喫緊の課題となっている。これまで教育庁では、スクールカウンセラーをはじめとする多様な人材の配置を進めてきた。また、昨年からは新たに、近隣の府立高校が合同で部活動を実施する「部活動大阪モデル」の導入のほか、デジタル採点や入学者選抜におけるオンライン出願等のICTを活用した校務運営の効率化等を進めてきた。

 さらに、次年度には教職員の校務用システムのクラウド化や持ち運び可能な端末機への切り替えといった、様々な取り組みを着実に進め、教育活動の充実とともに、働き方改革を進めていく。

 支援学校については、知的障がいのある子どもたちの増加に対応するため、今年4月に、「出来島支援学校」を開校する。さらに、豊能地域、大阪市北東部での新校整備に着手する。今後も、知的障がいのある子どもたちの増加が見込まれる地域を中心に、設置基準の適合や教室不足の解消方策の検討を進め、教育環境の充実を図る。

 来年4月には、大阪・関西万博がいよいよ開催される。子どもたちが身につけた生きた英語でのコミュニケーションにより、訪れる世界中の人々と交流する機会になるだけではなく、未来社会の革新的な技術やサービスを直接体験することにより、子どもたちが夢や希望を感じ、学び、考える絶好の機会だと考える。

 この機会を活かし、子どもたち一人ひとりの可能性を最大限発揮できるよう、様々な関係機関と協力し、将来を生き抜く力を育む教育をめざしていく。

県立高校の魅力化と新しい入学者選抜制度の構築

滋賀県教育委員会 福永 忠克 教育長

 現在はVUCA時代と言われ、社会構造の変化やグローバル化、多極化等の変化が大きくなっており、これまでの社会や制度の延長線上では対応できない段階にある。こうした時代にあっては、社会が高度化、多様化する中でも自ら未来を切り拓いていく力が一層重要であり、生徒一人ひとりが確かな学力と豊かな人間性・社会性を育めるよう、本県でも高校教育のより一層の魅力化にむけて取り組んでいる。

 本県では、「魅力ある県立高校づくり」のコンセプトを「多様な生徒一人ひとりが、『滋賀』という地域から学び、社会の一員としての自立を目指す学校づくりを進める」として、それぞれの学校でこそ行える学びを進めていくことが重要と考えている。

 「これからの滋賀の県立高等学校の在り方に関する基本方針」では、概ね10年から15年先を見据え、新しい時代を切り拓く人づくりのため、県立高校の在り方について全県的視野で基本的な考え方を示した。

 「滋賀の県立高等学校魅力化プラン」では、各高校の魅力化の方向性を示し、各県立高校に期待される社会的役割等(スクール・ミッション)を再定義するとともに、学校ごとに育成を目指す資質・能力に関する方針、教育課程の編成・実施に関する基本方針、入学者の受入れに関する方針の三つの方針(スクール・ポリシー)を定め、生徒の多様なニーズに応えられる、魅力と活力ある学校づくりに取り組んでいる。

 生徒たちが主体的かつ意欲的に学んでいくためには、学校ごとに魅力と特色ある教育活動が展開されていることが重要であり、今後、各学校において策定した「スクール・ポリシー」を起点としたカリキュラム・マネジメントを行い、地域の実態や需要等も考慮して魅力化を推進していく。


~ 令和の時代に対応した新しい入試制度の構築 ~

 こうした県立高校の魅力化の動きを受け、令和3年10月に「滋賀県立高等学校入学者選抜方法等改善協議会」を設置し、「生徒の優れた点を多面的な観点で評価しつつ、主体的な進路選択を推進する入学者選抜方法等のあり方について」を検討主題として協議を重ねてきた。

 会議に際しては、現場の教員や生徒からの意見も取り入れながら、これからの時代に対応した入試制度のあり方について幅広い視点から検討を重ね、令和5年11月10日に、最終報告をいただいた。

 この報告を受けて策定した入学者選抜の新制度では、従来は2月と3月に分けて実施していた複数の選抜を一つの時期にまとめ、原則として学力検査を全受検者が受けるとともに、主として学力を問う一般型選抜に加えて「各高校のスクール・ポリシーを生かした選抜」を実施し、従来の学校長推薦制度に加えて自己推薦制度を新たに導入する。

 学力を重要な指標の一つとしたうえで、なおかつ生徒一人ひとりが自分自身と向き合い、自身の資質や能力、興味や関心に合った学校を選択することで、将来にわたって「学び続ける姿勢」を育み、自身の能力を伸長して未来を拓く「学び」につながるあり方が、これからの入学者選抜制度には必要であると考える。


~ 多様性と共生の時代に向けて ~

 これからの時代は「多様化の時代」と言われ、教育の場においても、これまで以上に多様な教育ニーズへの対応が求められる。

 本県ではこのたび、令和6年度からの新しい「滋賀の教育大綱(第4期滋賀県教育振興基本計画)」を策定した。「夢と生きる力を育む」「学びの基盤を支える」「みんなで学びに関わる」を三つの柱とし「『三方よし』で幸せ育む滋賀の教育」をサブテーマとして、一人ひとりが大切にされ、お互いを尊重し合い関わり合うことで、皆が幸せになる地域づくりを目指す。

 また高校でも、この大綱に基づき、生徒がより主体的かつ協働的に学びに向き合える教育を進めていく。そのためにも、入学者選抜制度での柔軟な対応はもちろん、入学してからの学びの保障を確かなものにしていくことが重要だ。

 高校は、義務教育と社会での学びとをつなぎ、子どもが大人へと成長していく重要な過程の一つを担っている。その役割を十分に果たすことができるよう、高校の魅力化や入試制度改革を出発点として、高校教育のさらなる充実と発展に努めていく。

 奈良県の未来を創る子どもたちのために

 奈良県教育委員会 吉田 育弘 教育長
 
 昨年12月に学習到達度調査「PISA」の2022年の結果が公表され、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの三分野全てにおいて前回調査より平均得点が上昇したことなどがニュースになった。

 OECDの分析によると①数学の成績、②教育におけるウェルビーイング、③教育の公平性の三つの側面全てにおいて安定又は向上が見られたことからレジリエントな国・地域の一つとして、日本が挙げられている。

 しかし、学校が休校になった場合に自律学習を行うことに自信があるかという質問に対して、非常に多くの生徒から自信がないという回答が寄せられた。このことについて、国立教育政策研究所では、非常時のみならず、変化の激しい社会を生きる子どもたちが普段から自律的に学ぶことができる力を育成することが必要であると述べている。

 また、これに先立ち「令和の日本型学校教育」においても、子どもが自らの学習の状況を把握し、主体的に学習を調整できるよう促していくことが求められていることから、Society5.0の到来に伴う社会変革を支える人材の育成に向け、これまでの学びを見直し、これからの社会を生き抜くために必要な課題設定・解決能力、創造力等を醸成する学びへの転換を図る必要があると考える。

 本県では、「第2期奈良県教育振興大綱」のもと、各教育分野における20の主要施策を定め「奈良の学び推進プラン」を策定し、子どもたち一人ひとりの「学ぶ力」「生きる力」を育む「本人のための教育」を行っている。

 奈良でしかできない学びを重視し、「意欲の喚起」「学びの継続」「社会での活用」の実現を通して学びの質を高め、奈良の歴史、文化、自然を活用して学びを深めている。

 また、ICTなども活用しながら授業改善に力を入れており、子どもたちの多様な個性・才能・創造性を伸ばし、実生活・実社会の様々な場面で直面する課題について主体的に自ら思考し、判断・表現できる力を育成することで、学びの楽しさや意義を感じられるように指導・支援している。

 また、今年は現行プランの最終年度を迎えることから、より一層の施策の充実を図っている。

 中でも、いじめ・不登校等への対策について、本年度から小学校では奈良県独自に開発した「気付き見守りアプリ」を活用し、いじめを含め児童の変化を早期に発見し対応できるよう児童の情報共有を行ったり、中学校では不登校生徒を支援する「奈良県ネットワーク型フレキシスクール」を開設し、全県的に生徒の学習支援等を行ったりしている。

 さらに、高等学校では次年度から通信制課程と全日制課程における学校間連携を活用し、不登校生徒が在籍校を卒業できる可能性を高める仕組みを整えるなど、社会的・心理的支援及び学習支援の充実を図っている。

 アメリカの教育哲学者、ジョン・デューイは、「子供の教育は、過去の価値の伝達ではなく、未来の新しい価値の創造にある。」と言っている。子どもたちが生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を求める時に、個人を取り巻く場や地域、社会も持続的に良い状態であることが必要だ。教室での学びを通して、持続可能な社会を維持・発展させていくために、自らが社会の創り手となることの大切さを伝えていかなくてはならない。

 未来に向けて、子どもたち一人一人が自らの個性・能力を伸長し、多様な価値観に基づいて地球規模課題の解決等をけん引できる力をつける学びや、幸福や生きがいを感じられる学びを支えていきたいと思う。

 そのためにも、教育行政の関係者はもとより、教育に関わる全ての人々と「奈良の学び」の目指す方向性を共有し、奈良県の未来を創る子どもたちの夢を育み、夢を実現できる教育をともに推進していく。

 「新しい京都府の教育」の実現に向けて

 京都府教育委員会 前川 明範 教育長

 これからの変化の激しい予測困難な時代を生きていく子どもたちには、その変化を前向きに受け止め、主体的に行動し、よりよい社会と幸福な人生を創り出せる人となってもらいたいと考えている。

 昨春、小・中学校において、1人1台端末を活用した「京都府学力・学習状況調査~学びのパスポート~」を本格実施した。子どもたち一人一人の指導に生かせるよう、学力の伸びと、学びに対する積極性など非認知能力の関係の分析を進めている。

 この調査で得られたデータの活用や、これまで積み上げられてきた教員の経験、学校での取組に加え、教員それぞれのレベルに合わせて学べるICT研修等による指導力向上に取り組むことにより、個別最適な学びと協働的な学びを一層推進し、子どもたち一人一人に寄り添った教育を進めていく。

 このような府内全体で進める取組だけではなく、市町村が抱える様々な課題に対応するため、各市町(組合)教育委員会が行う、地域の実情に応じたきめ細かな取組を支援する「子どもの教育のための総合交付金」を創設した。効果の高い取組が府内に浸透しながら進化するという好循環を生みだし、今後、京都府の教育環境をさらに充実していく。

 時代の変化の中で、府立学校に求められる役割も変わってきている。

 そのため、「府立高校の在り方ビジョン」に基づいて、高校改革に関する基本的な方針を示す「魅力ある府立高校づくり推進基本計画」を昨年12月に策定した。今後は、地域別の実施計画を段階的に策定・公表し、少子化の時代にあっても、すべての生徒が夢や希望を持ち、未来に向かっていきいきと学ぶことができる高校づくりを進めていく。

 また、特別支援学校については、特別支援教育の在り方を学校現場と議論しながら様々な改革を進めてきており、昨年、仮校舎への移転を行った向日が丘支援学校では、教育と福祉の連携による共生社会の実現をめざし改築を行っている。これまでの改革を受け、次なるステップとして、障害のある子どもとない子どもが共に学ぶインクルーシブ教育も含めた今後の京都府の特別支援教育の在り方についても、新たに検討したいと考えている。

 一方で、いじめ対策や不登校児童生徒への支援については、一人一人の子どもたちにしっかりと寄り添うことが重要であるため、スクールカウンセラー等の専門人材や市町(組合)教育委員会の教育支援センター等とも連携をさらに進めるとともに、働き方改革により教員が子どもたちと向き合える時間を確保するなど、誰一人取り残さない教育の実現に向けて取り組んでいく。

 昨年、文化庁の京都移転が実現し、文化財行政の在り方も転換期を迎えている。京都府においても、リニューアルを進める丹後郷土資料館では、地域の歴史文化を学ぶだけではなく、エリア全体の観光や交流に繋げるハブ機能を発揮できるミュージアムを目指している。これからは、従来の保存だけでなく、恭仁宮の活用整備をはじめ、地域の活性化と京都の歴史文化の魅力発信に繋がる活用の在り方を検討しながら、文化財行政に取り組んでいく。

 また、スポーツをするだけではなく、みる・ささえるという視点を取り入れ、スポーツを通じて夢が広がり、能力を生かして活躍できる社会の実現を目指す「京都府スポーツ推進計画」の改定にも取り組んでおり、子どもたちが、生涯を通じて文化やスポーツに親しむ機会の創出を図っていきたいと考えている。

 すべての人が、子どもたちをあたたかく見守り、小さな変化に気づいて支えることが、「包み込まれているという感覚」や「自己肯定感」に繋がる。

 学校だけでなく、家庭・地域・社会との繋がりの中で、すべての子どもたちが幸せや生きがいを感じ、持続可能な社会の担い手となれるよう、皆様と手を携えながら、新しい京都府の教育の実現に全力を尽くしたい。

 
 どのような学びが必要か

 
和歌山県教育委員会 宮﨑 泉 教育長

  和歌山県では、令和元年度から丸3年をかけて、今後の県立高等学校の在り方について議論を重ね、県立高等学校の再編整備に係る原則と指針を取りまとめた。

 地域社会を担う人材育成や、地域とともに持続可能な学校の在り方など、県立高等学校に期待される使命・役割とは何かを議論する中で、生徒減少期にあっても地域から選ばれる高等学校、地域の期待に応えられる高等学校を作っていくことの重要性を改めて感じた。

 昨年4月には、第4期目となる和歌山県教育振興基本計画を策定した。計画の策定は地道な議論を要する作業ではあったが、これを契機に、教育委員会が行う業務の「棚卸し」を行い、これまで取り組んできた施策、これから取り組むべき施策を是々非々で議論できたことは、計画策定の副産物として大変意義があった。


- 専門学科教育の充実 -

 このような議論を経て実行に移した取組はいくつかあるが、その一つに、専門学科教育の充実があり、ここでは工業科について紹介したい。

 本県の県内総生産を産業別割合でみると、製造業・建設業のいわゆる「ものづくり産業」が約3分の1を占める[県民経済計算(2020年)]とともに、県内企業の指定校求人数は約3,600人(令和5年10月現在)となり、新規高卒求人への期待は大きい状況にある。

 一方で、高校卒業時に就職を希望する生徒は約1,200人(新規高卒者の17%程度)に減少するなど、人材の需要と供給の面から見るとアンバランスが生じているのが現状だ。

 そこで、産業構造の変化への対応と、地域産業の未来を担う工業人材の育成を目指し、「新たな工業教育を創造するワーキンググループ」を立ち上げた。メンバーは、企業の技術責任者、大学、高専、県工業技術センター等の専門家、工業高校の管理職や教員などで構成され、県教委も事務局として関わることで、大所高所からの方向性の示唆と、ボトムアップ型の提案を両立させることを意図している。

 このワーキンググループでは、工業教育を基礎にした高等教育機関への進学を強化するための課外授業の実施や、工業に関する知識や技能が自己有用感や将来のやりがいにつながる学習内容の検討、AI/IoTやロボティクスなどの技術革新に対応できる人材育成のための教育プログラムの開発などの必要性が議論されてきた。


- 蓄電池人材の育成 -

 工業教育の充実を図るうえで特筆すべきは、これからの和歌山県、ひいては日本に必要かつ重要な産業となりうる蓄電池産業との関わりだ。関西には蓄電池メーカー、製造装置メーカー等の生産拠点が集積しており、製造品出荷額は全国シェアの約36%を占めるという。

 本県では、近畿経済産業局等が事務局を務める「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」に初期の段階から参画し、同局から前述のワーキンググループに対して「産業界の現状と今後について」という題目でプレゼンテーションをいただいた。また、令和6年度には、選定された実施校で教育プログラムの実践と教育内容の検証を予定している。


- 子供・若者の思いと社会・時代に合わせた教育を -

 このワーキンググループの議論を通して工業科の在り方を考えるとき、今後は、電気や機械などの専門領域間で柔軟に交流したり融合したりする学び、AI/IoTに関連した学び、希望する生徒に理工系大学への進学を保障する学び、基幹産業や成長産業に対応した学びなどへの対応が求められると思う。

 世の中はどんどん進んでいる。そして、それを担う子供・若者が描く、自己や社会の将来像もまた、どんどん変化していくだろう。そのような中で重要なことは、どういう学問を追究していくのか、どういう将来像を描いていくのかを、個人のレベルにとどまらず、県・国・社会のレベルで考えていくことだと思う。

 和歌山県として、一人一人の自己実現につなげるため、どのような学びが必要かをこれからも問い続けていきたいと思っている。


※一部省略

戻る



当HP掲載記事の無断転載・転用を禁じます。
©2024 Kyoikujihosha All rights reserved.