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地方の時代
「わが府県の教育改革」

 
きょういく時報」23.1.8号掲載>


 「未来への道を切り拓く力」の育成に向けて
兵庫県教育委員会 藤原 俊平 教育長
 
 兵庫県では、「第3期ひょうご教育創造プラン」において「こころ豊かで自立する人づくり」を基本理念に据え、兵庫の教育の推進に取り組んでいる。

 1995年の阪神・淡路大震災、そして1997年の神戸市須磨区の連続児童殺傷事件から、「命の尊さ」や「人と人、地域と地域の支えあいの大切さ」の理解と普及を教訓とし、教育施策のベースとしてきた。

 小学校5年生で実施する自然学校推進事業や、中学校2年生で社会とのつながりを体験する「トライやる・ウィーク」など、発達段階に応じた兵庫型「体験教育」に今後も力を注いでいく。

 高等学校では、昨年策定した「県立高等学校教育改革第三次実施計画」に基づき、①県立高等学校の魅力・特色づくりの推進、②県立高等学校(全日制)の望ましい規模と配置、③入学者選抜制度・方法の工夫と改善に取り組む。

 特別支援学校については児童生徒数が増加の一途を辿っており、学校の新設や校舎の建替え、増築など計画的に整備を進めていきたい。

 義務教育では、小学校1~4年生までは35人学級を、5・6年生では少人数授業等を導入し、学力向上に向けた学習環境づくりに取り組んできた。今年度からは、教科担任加配とこれまで本県が独自に進めてきた学級担任の交換授業を組み合わせ、国が指定した教科担任制の優先教科(算数、理科、体育、外国語)の指導の充実を図っている。

 中学校では、少人数授業と35人学級を学校の実情に合わせて選択できるようにも工夫している。

 教職員の働き方改革では、校務支援システムや服務システムの導入に続いて、学校徴収金管理システムの導入を検討する等、ICTを積極的に活用し業務の効率化を図る。

 また、部活動の指導についても、中学校における部活動指導員の配置事業や、休日の部活動の地域移行への対応など、国の動向も踏まえながら着実に進めていく。

未来を拓く教育のさらなる充実をめざして
大阪府教育庁 橋本 正司 教育長
 
 令和5年度から10年間の大阪府の教育の方向性を示すため、昨年12月、第2次大阪府教育振興基本計画の素案をまとめた。

 学力の向上については、昨年度に引き続き小学校で、すくすくウォッチを実施したが、今年度からは新たに、結果の経年変化を個人票として作成できるシステムを学校に提供するなど、市町村教育委員会の取組みを支援する。

 また、中学校では、昨年度に引き続き、チャレンジテストを通して学力を把握・分析し、改善に向けた施策の充実に努める。

 府立高校におけるICTの利活用については、昨年度策定したアクションプランに掲げる 1人1台端末を活用した協働的な学びの支援の達成に向け、オンライン上での小テスト等の実施や外部講師の講演等に取り組む。

 新たに設置する多様な教育実践校については、少人数学級の実現や充実した体験型学習等を通して、社会で自立する力を身につける学校づくりをめざし、府立西成高校及び府立岬高校において、令和5年度から段階的に取組みを進める。

 工業系高校については、昨年11月に大阪府学校教育審議会でとりまとめられた「今後の工業系高等学校のあり方について」の答申を踏まえ、大学進学へのさらなる対応、時代に即した基礎・基本への対応、企業連携の拡充等の取組みを進め、府におけるものづくり教育の活性化に向けて教育内容等の一層の充実を図る。

 支援学校については、昨年度に引き続き、元府立西淀川高校を活用した新たな知的障がい支援学校の整備等に取り組む。また、知的障がいのある子どもたちの増加が見込まれる地域を中心に、設置基準への適合や教室不足の解消に必要となる方策の検討を進める。

 教職員の働き方改革を推進するため、部活動のあり方に関する検討をはじめ、持ち運び可能な端末の配備やシステムのクラウド化、グループウェア等を活用した校務運営の効率化等、時間外在校等時間を縮減できる環境整備を進める。

宇宙教育の推進 
和歌山県教育委員会 宮﨑 泉 教育長

 和歌山県では、令和4年3月に「県立高等学校教育の充実と再編整備に係る原則と指針」を策定し、少子化が進む中にあっても、それを高等学校教育の改革・充実の契機と捉え、様々な取組を進めている。

 その1つに、公立高等学校で全国初となる串本古座高等学校の宇宙探究コースの設置がある。

 宇宙探究コースは、全国初の民間小型ロケット発射場に近接するという串本古座高等学校の特性を最大限に生かし、宇宙を題材にした新たな教育を創造するとともに、県内外から宇宙に興味・関心をもつ生徒を集め、地域や学校の活性化を図ることを目的として設置する。

 令和6年度の開設に向けて段階的に取組を進め、令和4年度の入学生は、「総合的な探究の時間」の中で宇宙に関連した学習を実施するとともに、缶サット甲子園への出場等にも取り組んでいる。

 また、令和5年度入学生は、選択科目の中に宇宙に関する科目の開設を予定している。

 本年度の「総合的な探究の時間」では、国際宇宙ステーションの関係者等による宇宙講座の開催や、串本町で開催された宇宙シンポジウムの運営協力を行い、高い評価をいただいた。

 宇宙探究コースでは、宇宙やロケットに興味・関心をもつ生徒を県内外から広く募集することにしており、現在、寄宿舎など、生活環境の整備も着実に進めている。

 また、宇宙探究コースも含めた串本古座高等学校の取組は、文部科学省の普通科改革支援事業の採択も受けている。今後の本県高等学校教育の特色化・魅力化や活性化に向けて、先駆的な役割と位置付けるとともに、全ての県立高等学校の充実につなげていきたいと考えている。

これからの時代を生きる子どもたちのために
奈良県教育委員会 吉田 育弘 教育長
 
 現在、奈良県では第2期奈良県教育振興大綱のもと、子どもたち一人一人の「学ぶ力」「生きる力」を育む「本人のための教育」を行っている。

 県教育委員会では、「本人のための教育」を推進するために、「奈良の学び推進プラン」を策定し、ICT機器等も有効に活用しながら、子どもたちに対する「指導の個別化」と「学習の個性化」を図り、「個別最適化した学び」の実現に努めている。

 1つ目にSubject-based型の授業展開からProject-based-learning型の課題解決型の主体的な学びの授業展開への転換を図る。

 この実践においては、実社会との関係性に触れ、本物や一流のものに触れる機会を作り、探究的な学びを積み重ね、実践的な課題解決能力を伸ばしたいと考えている。

 2つ目にSTEAM教育の推進を図る。今後の社会を生きる上で不可欠になる科学技術の要素と幸福な人間社会を創造する上で欠かせないリベラルアーツの要素を教科の枠組みを越えて学び、「知る」と「創る」の循環により、新たな「知」を構築し、自ら考え抜く力を育むことを目指す。

 日本をとりまく社会環境が大きく変化している中で、子どもたち一人一人が、地域や地球規模の諸課題について自らの課題として考え、持続可能な社会づくりにつなげる真の力を付けるとともに、時代の変化に柔軟に対応し、自らの人生を創出することができる豊かな力を育めるよう、子どもたちの伴走者としてあり続けたい。

 そのためにも、市町村教育委員会や学校現場と協働し知事部局や大学等関係機関とも連携しながら教育行政を推進したいと考えている。

滋賀の教育で大事にしていること
~これまでとこれからの滋賀の教育~
滋賀県教育委員会 福永 忠克 教育長

 平成31年に滋賀県が定めた「滋賀の教育大綱(第3期滋賀県教育振興基本計画)」は、本年に最終年度を迎える。5年間の取組の総仕上げと、さらにその次を見据えていく1年にしたいと考えている。

 「滋賀の教育大綱(第3期滋賀県教育振興基本計画)」では、「学ぶ力」の向上に向けて、文章や情報を正確に読み解き理解する力と、相手の言葉やしぐさ、表情から、相手の意図や思いを読み解き理解する力からなる「読み解く力」の育成に重点を置いた取組を展開している。

 また、「読み解く力」を育むための基盤であり、個人の視野を広げたり考え方を深めたりすることにもつながる、読書に焦点を当てた取組を展開している。

 滋賀県は、日本最大の湖、琵琶湖をはじめ、森・川・里・湖が織りなす豊かな自然に恵まれている。県内のすべての小学5年生は、琵琶湖に浮かぶ学習船「うみのこ」に乗船して体験学習に取り組む。

 琵琶湖の水質など環境学習に取り組むことはもちろん、他校の児童と一緒に乗船して交流活動をするなど、先生方にも様々な工夫をいただきながら、一生忘れられない体験として、子どもの豊かな心や、ふるさと滋賀への愛着を育んでいる。

 「滋賀の教育大綱(第3期滋賀県教育振興基本計画)」の残りの期間が僅かとなる中、私たちは、子どもたちも、先生方も、地域住民の方々も、みんなが前向きになれるような計画を作っていきたいと考えている。

 特に重要なキーワードの一つは「三方よしの幸せ(ウェルビーイング)」だと思っている。

 ウェルビーイングは、自分自身だけでなく、相手や、社会全体を対象とした「幸せ」であり、子どもを中心にとらえると、子ども、先生や家庭、地域社会ということになる。まさに「三方よし」ではないかと、改めて先人の知恵の奥深さに気付くことになった。

 
新しい時代の教育の実現に向けて
京都府教育委員会 前川 明範 教育長

 京都府教育委員会では、新しい時代の学びを実現するため、ICTを活用した学習支援やICT教育の人材育成を行う拠点として「京都府デジタル学習支援センター」を開設し、ICTの活用能力や授業における効果的な使い方など、教員の資質向上の取組などを進めている。

 来年度には、一人一人の学力の伸びや非認知能力を分析し、指導に生かす「京都府学力・学習状況調査~学びのパスポート~」を本格実施し、本調査を通じて、学力の向上を図っていきたいと考えている。

 また、子どもたちの学びに大きな役割を果たす教職員の働き方改革を一層推進するとともに、長引くコロナ禍が子どもたちの心にも影響を及ぼしていることが懸念されることから、引き続き、関係機関と連携し、子どもたち一人一人に寄り添った支援や相談・サポート体制の充実に取り組んでいく。

 さらに、少子化が進む中、文化・スポーツ活動をはじめ、子どもたちの学びの環境を確保していくことが重要であり、各地域の実情や課題を踏まえた教育環境の充実に取り組んでいきたい。

 府立学校では、昨年3月に策定した「府立高校の在り方ビジョン」の具現化にあたり、外部有識者による懇話会を設置し、様々な観点からご意見をいただいている。令和5年度中には、基本計画を策定することとしており、地域の実情を踏まえた魅力ある府立高校づくりを確実に進めていく。

 また、昨年4月に「地域と共に歩む学校」を教育理念とする井手やまぶき支援学校を開校し、子どもたちが地域で自分らしく暮らし、働くことができ、共生社会の担い手となれるよう一層取組を進めるとともに、向日が丘支援学校の改築整備を円滑に進め、教育と福祉の連携による切れ目ない支援のさらなる充実を目指す。

 今春には、いよいよ文化庁の京都移転が実現する。子どもたちが文化芸術に親しむ機会を一層充実させ、豊かな感性や創造性を育むとともに、京都が誇る文化財の魅力の国内外への発信に努めていく。


※以上要約

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