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【論点】
日本の経済社会の転換点

<きょういく時報」21.7.18号>


 「米国の国民が昨年1年間で一人当たり約55万円の利益を失っている。 その原因は市場の寡占化による、大手企業の独占によって、商品の価格に競争力がなくなり、高値安定によって国民が利益を失う状態で出てきている」との理由から、バイデン大統領は、このほど大企業の競争促進化等に関する大統領令に署名したという。

 わが国でも他人事ではない。相次ぐ大手企業の価格談合が摘発され、さらには大手企業の脱法行為など新聞を賑わし、その度に「企業コンプライアンスの強化」「企業ガバナンスの強化」がオウム返しに語られる。

 今日ほど、企業の社会的責任が軽視されたことは、過去なかったのではないだろうか。

 新自由主義の考え方のもとではじまった極端な市場主義が、大手企業等の市場の独占化による価格の高値安定や格差増大による少子化や子供の貧困、減少しない自殺者など、国民生活にとって大きな弊害を生んでいる。

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 海外での日本企業の振舞いも、国際的に波紋を呼んでいる。

 NPOヒューマン・ライツ・ナウが今年4月にまとめた報告書『ミャンマーの人権侵害と日本企業の関与と責任』によると、日本のある真珠メーカーは、2001年から800万ドルを投資し、ミャンマー軍との間で、現地での真珠生産に関する協定を結んだとされる。

 業務提携はミャンマー真珠公社との間で行われ、メーカー側が2018年、協定の5年延長を申し出た。

 業務提携でミャンマー最大の真珠生産企業となったこの企業体では現在、あらたな生産場の建設が予定されているという。

 ところが、地元のタニンダーリ地域には、現地のモーケン族の人々が生業とするイカの漁場があり、建設予定地が漁場周辺に触れることでモーケン族の生業が圧迫されることのないよう、現地ではタニンダーリ地方政府に対する請願が出されている。

 一方、真珠メーカーとミャンマー真珠公社との業務提携については、少なくとも2023年まで継続される計算になるが、再延長もあり得るようだ。

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 EUでは、企業が人や社会に与える影響の大きさに配慮して、企業に対しては、経済的利益だけでなく人権への負の影響の特定や予防、軽減、防止の責任が求められている。

 この指導原則自体が法的拘束力を持つわけではないものの、EU各国はその責任を果たすため、ロードマップを示すなど行動計画を制定しているという。

 日本政府も、National Action Plan(NAP)=行動計画を2016年に制定し、内容が昨年10月16日に公表されたが、既存の政策・法律と国際人権基準とのギャップを特定するアセスメントが実施されてないため、その実効性には批判がある。

 国連による持続可能な開発アジェンダ=2030(SDGs)に大きく関連する「企業の国際人権に対する責任」を、日本でも本気で推進していかないと、国際社会から再び“エコノミック・アニマル”などと揶揄されることにもなりかねない。

 再び揶揄される国になることだけは避けたいものだ。

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 安倍政権発足以来、教育の分野においても、内閣府に設置された教育再生実行会議のもと、公立学校の選択制や、学校の公設民営化など、本来教育行政がやるべきことを民間に外注する形で、積極的に教育の市場化が行われている。

 今春スタートした大学入学共通テストに関しては、民間英語試験の導入が頓挫する結果となったが、本来教育行政が担うべき核となるはずのものまで市場化に委ねようとして失策につながった、といえないだろうか。
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