加計学園が経営する岡山理科大学が愛媛県今治市に開学を予定している獣医学部の設置問題。安倍首相の関与と内閣府の問題がクローズアップされている。
本来、中央省庁のタテ割り行政の弊害をなくす目的で規制緩和に期待が寄せられていたが、安倍政権になり、規制緩和の方法が大きく変容してきている。
ゆがめられた特区政策
安倍政権が打ち出した国家戦略特区政策がその大きな原因だと指摘する声も多いが、とくに小泉政権以降、安倍内閣で進められてきた規制緩和に伴う市場化政策が、いびつな形となっている。
その一つの例として、内閣府の参与や委員という公職にありながら、そこで得た情報をもとに自分たちが優位に立ち回るという構図が目立つ。いわば内閣府を舞台に“相撲取りが行司を兼ねる”状態である。企業社会におけるインサイダー行為に類似しているとさえ感じる。
今年1月20日の国家戦略特別区域会議合同会議で、加計学園の加計孝太郎理事長が、「区域会議構成員」として参加していた事実が明らかになっている。
つまり、審査検討する会議に、審査される側が参加していたことになる。区域会議はこれまで幾度か開催されているのだろうが、誘致する自治体の財政状況や、誘致に伴うリスクなどが話し合われた様子は見受けられない。まず加計学園の誘致ありきといった感じだ。
「かたい岩盤規制」とは…
さらに、この会議には今治商工会議所特別顧問の加戸守行氏が委員として参加している。
加戸氏は、「私が愛媛県知事時代から誘致をはじめて10年になる。かたい岩盤規制だった」と、自ら誘致の伏線を作ってきたことを吐露していることが会議録に記されている。
加戸氏は元文部官僚。1989年のリクルート事件で文部省大臣官房長を辞職し、愛媛県知事を3期12年務めた。知事退任後は2013年から教育再生実行会議の委員。
市民の血税と土地の無償貸与
内閣府での事例も挙げてみよう。
元文部官僚の木曽功氏は、安倍内閣の官房参与をしながら加計学園の理事、さらには同学園が経営する千葉科学大学の学長でもある。
その千葉科学大学にはそもそも、加計学園の本拠地・岡山県の副知事から銚子市長となった野平匡邦氏が誘致した経緯がある。
野平氏は岡山時代、加計学園の系列大学で客員教授だった経験もあるとされる。
一方、千葉科学大学が銚子市に誘致された当時、約1万8,000人の「大学誘致の是非を問う住民投票の請願書」が市議会に提出されたが否決。結局、市から加計学園に対して、大学誘致のための補助金77億5,000万円の血税と土地の無償貸与が行われたという経緯がある。
その後、銚子市では2008年に、市民病院が経営危機に陥ったこともあるようだ。ちなみに銚子市の2016年の一般会計予算は241億円で、実にその三分の一が加計学園の千葉科学大学に渡ったことになる。
(www.chiba-goudou.org/)
虚弱な自治体がターゲットに
結果的にそうなったのかどうかはわからないが、あらかじめ“虚弱体質の自治体”を見つけては、特区による大学誘致を仕掛け、虚弱な自治体財政から巨額な誘致資金と広大な土地の無償提供を獲得していくといった構図が共通して見えてくるようだ。
多くの国公私立大学が補助金を削減され、大学運営の厳しい効率化が求められている現状で、どのような権力の圧力であれ、文部行政がゆがめられることがあってはならない。
(N)
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