アメリカの公立校で、全国テストの成績を上げるため、優秀な成績を修めた子に対して学校がお金を渡す
―― といった、冗談とも思える現象が今起きていると、「白熱教室」のマイケル・サンデル教授が近著の中で紹介している(『それをお金で買いますか』早川書房刊)。
こうした現象は市場経済主義の末期的症状だとサンデル教授はいう。
振り返って今、大阪でも「全国共通テスト」のワースト2を返上すべく、学校ごと自治体ごとの成績を公表したり、経済的弱者に対して、自治体が塾費用をクーポンのかたちで助成するなど“思いつき政策”で“競争”のための教育が進められている。
競争によって「インセンティブ」を与える ―― こうした市場経済主義の考え方は多くの弊害を生じ、もはや終焉を迎えつつあるとサンデル教授は述べている。
教育にこのような考え方がそぐわないことは、これまでにも多くの教育学を専門とする学者の人々から指摘されてきた。
だが大阪市の市長は無視し続けている。むしろ「教員は敵」のような姿勢さえうかがえる。
4年前、府知事当選を果たした現橋下大阪市長は、当時「日本一の教育」を公言したが、その成果は現在どうなのか。検証すらされないままだ。
教育に即効性は求め難いことなど教育現場はわかっている。
対立のための論議ではなく、学校現場や行政が家庭への呼びかけをあきらめないで続けていけるような環境作りのための論議に力を注いで欲しいと思う。
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