親にとって、「朝になると起きられない」わが子の姿を見るのは辛い。子供に接する態度も厳しくなってしまいがち。だが、もう一度よく考えてみては――。
この本の著者は、浜松医科大学心療内科で漢方を取り入れた治療や研究を行ってきた森下克也氏。数年前にクリニックを開業し、「数百名の起立性調節障害の子供たちと共に」過ごす中、この病気について「さらに多くのことが見えるようになった気がする」という。
「ストレスが身体に出やすい子供の心」
起立性調節障害の主な症状は、めまい、頭痛、腹痛、便秘、下痢、乗り物酔い、寝つきが悪い、朝起きづらいなど。
胃カメラ・心電図の検査結果では「異常なし」とされるが、臓器の働きをコントロールする自律神経には問題が見られることも多いようだ。
怒ると血圧が上がり顔が熱くなったり、心地よい草原に寝転んでいると、呼吸がゆったりして全身の筋肉がリラックスした経験は誰にもあるだろう。実はこのとき、人知れず働いているのが自律神経だという。
小学校の高学年にもなると急激に背丈が伸び始め、神経の成長速度が追いつかずに、体格とのバランスが崩れて起立性調節障害が引き起こされるらしい。
起立性調節障害のタイプには、血圧を上げる薬などで改善される「身体型」と、心の問題を背景とした「心身症型」があるという。
しかし原因や症状は人によって様々なことから、診断は難しいようだ。同著でも「病院にかかるたびに違う診断をつけられている」B君やCさんの症例が、親や周囲の戸惑いとともに描き出されている。
“心身症ピラミッド”
心身症については「4つの要素から成る」とも述べられている。“心身症ピラミッド”の根底には、「やりたいことが見つからない、自分が嫌い」など、自分への信頼にかかわる問題が横たわっているという。
同著の巻末には「自分の中にある可能性の原石を発掘しよう!」と呼びかける『未来日記』の付録がついている。
「能力がない、才能がない、お金がない、を言い訳にしない」「やりたいことが見つからない人は“やることを決める”」など、将来像を描く際の心がまえもアドバイスしてくれる。
同著の後半部分では、具体的な治療法が紹介されている。
自律神経を鍛える簡単なトレーニング、睡眠薬を使わないで寝つく方法、行動日誌のススメ、“起床後は絶対ベッドには横にならないようにしよう、どうしても横になりたくなったらこのように――”など、手とり足とりの説明は、面白くなるほどきめ細かく具体的。漢方薬のメリットも書かれている。
「『病気』よりも『人』をみていく全人医療」に取り組む著者は、温かい言葉かけが子供の自立心を育むと強調している。学校の先生方に向けた提言も見える。(M)
『うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある
~親子で治す起立性調節障害~』
森下克也著・株式会社メディカルトリビューン発行 2012.4.20/1500円+税
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