民主社会にとって重要とされるいくつかの課題。 その一つが情報開示のあり方だと言われる。米国国立公文書館には連邦政府のあらゆる公文書や記録が集められ、それらは「いずれ公開されるもの」とのポリシーのもとで、保存・公開が行われているという。
こうしたプロセスの重要性を、同館のマイケル・J・カーツ氏は語る。先般来日した同氏の講演を今号よりシリーズで紹介する。
<編集部> |
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米国のワシントンDCに、国立公文書館(NARA)があります。同館は政府から独立した機関であり、最高責任者は大統領によって任命されますが、その他のスタッフは公務員としての扱いとなっています。
NARAは1934年に設立されました。連邦政府には膨大な量にのぼる文書記録が存在していますが、
連邦政府のいかなる省庁も、NARAの最高責任者の承認なしにこうした記録を廃棄することはできません。そのことは、法律に定められているからです。
各省庁全記録ファイルの
リストアップを義務付け
各省庁では、作成された全てのファイルシリーズを「記録スケジュール」としてリストアップしなければなりません。トップレベルから末端の事務レベルまで、全ての記録がこの中に含まれることになります。
「記録スケジュール」には、各ファイルシリーズに何が含まれているのか、そしてファイル作成の目的やその作成者についても詳細に記録されています。
このような各ファイルシリーズに歴史的な価値があれば永久保存されますし、限定的な価値しかなければ一定期間が経過した後で廃棄されることになりますが、それを判断する重要な役割をNARAは負っています。
こうした記録管理システムは、政府が説明責任を果たす上で、また情報の管理を行う上でも大切な鍵となるものです。機密情報解除の作業も、歴史的な価値があると認められた記録に対してのみ行われます。
NARAは、記録管理の他にも大統領図書館を管理運営する責任を負っています。
大統領図書館は米国各地に存在します。ハーバード・フーバー大統領からビル・クリントン大統領まで、歴代の大統領図書館が設置されており、ブッシュ大統領の場合も退任後はテキサスに図書館ができることになっています。
一方、連邦の官報もNARAの管理下にあります。大統領命令や法律、規則など官報によって公布される記録の分類、機密指定、機密解除を行うための重要な部署が情報セキュリティー監督室です。
情報セキュリティー監督室では、行政府全体の監督業務が行われています。国家の安全保障にかかわる情報などは、ここで機密指定や機密解除を行います。
さらに、情報セキュリティー監督室は、NARAの機密解除作業を監督する立場にあります。
また、NARAは全国組織であり、先に述べた大統領図書館のほか、各地域に記録センターや公文書館など全米に33の関連施設を持っています。
私が担当しているのはワシントンDCの地域で、ここでは200万立方フィートにわたり様々な記録が保管されています。しかしそのうちの約100万立方フィートは、未処理の記録となっているため入手困難な状態となっているのが現状です。
そこで私どもは、従来記録の照会業務に当たっていたスタッフのほとんどをこうした文書の仕分けなど情報処理業務に回し、組織の再編を行いました。
これにより、10年間で未処理の記録を解消できる目途が立ち、実際1年目の目標を達成することもできました。
<つづく>