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地方の時代/わが府県の教育改革

子どもも教職員も笑顔あふれる学校を目指して

滋賀県教育委員会
福永 忠克 教育長

 
きょういく時報」25.1.18号掲載>


 新年にあたり、謹んで御挨拶を申しあげます。

 さて、教育現場では、教員不足と長時間労働という深刻な課題に直面しています。これらの課題を解決し、質の高い教育を提供しながら、教職員が心身ともに健康で働ける職場環境を整えることは必要不可欠です。

 本県では、令和5年3月に「学校における働き方改革取組計画」を策定し、子どもも教職員も笑顔あふれる学校の実現に向けて、学校における働き方改革を積極的に推進し、教職員が誇りややりがいを感じ、健康でいきいきと勤務できる環境づくりに取り組んでおります。

 この計画では、教職員の超過勤務削減(月45時間以内、月80時間超を0人)、年次有給休暇取得の促進(年間14日以上)、そして「やりがいがある」「職場は働きやすい」と感じる教職員の割合の向上を目標として掲げています。

 そして、これらの目標達成に向けた具体的な施策を展開しています。令和6年度には、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)を、市町立学校については6クラス以上の配置基準を廃止し、全市町立学校および県立学校(6クラス以上)に配置できるように予算措置し、事務作業などの負担を軽減しました。

 加えて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充することで、多様化する教育課題への対応を強化し、部活動指導員や小学校での教科担任制の拡充を進め、専門性を活かした指導体制を整えました。

 ICT技術の活用による業務効率化にも取り組んでおり、県立中学校・高等学校では、令和5年度から採点支援システムを導入しています。これにより、教職員が短時間で正確に採点できるとともに、各種の集計・分析の機能により指導内容の改善や個別指導の充実につなげることができます。

 一部の学校ではタブレット端末を活用し、答案をオンラインで返却する試験運用を実施しています。「学校閉庁日」を設定しており、夏季・冬季に15日間設けることで、教職員がリフレッシュできる期間を確保し、ワーク・ライフ・バランスの実現にも寄与しました。

 これらの取組を通じて、教職員の業務負担を軽減し、子どもたちと向き合う時間を確保する環境を整備しました。

 また、深刻化する教員不足への対策として、教員免許を持ちながら教育現場で働いていない方や、教職に興味を持つ方を対象に「教員へのファーストステップセミナー」を実施しています。

 このセミナーでは、学校現場におけるICT活用の体験や、現役教員との交流、学校見学の機会を提供し、教育現場の魅力を伝え、参加者の不安を解消し、教職への復帰や新たな挑戦を後押しすることで、人材確保と教育環境の充実を図っています。

 さらに、県教育委員会事務局内に業務改善ワーキンググループを立ち上げ、学校や市町教育委員会の業務負担軽減を図る取組を進めています。業務改善検討を通じて、担当職員の意識改革を促し、その成果を各課室に情報共有することにより、県教育委員会全体で課題解決に取り組んでいます。  

 また、生成AIの活用による業務改善事例について情報共有し、業務効率化を推進しています。各課室でも業務の見直しを積極的に行っています。

 これらの取組により、「学校における働き方改革」の教職員意識調査では、職場環境に対する肯定的な回答が増加するなど、一定の成果が表れています。しかしながら、時間外在校等時間は依然として高止まりしており、更なる業務の効率化と環境改善が必要であると考えております。

 令和7年度は、このような課題の解決に向けて、教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)の全公立学校への配置措置および部活動指導員など外部人材の配置拡充を進め、ICT技術や生成AIの活用による校務負担軽減策も一層推進してまいります。

 採点支援システムについても更なる利用促進や、答案のオンライン返却などによる印刷業務や紙の削減を実現できればと考えています。業務改善ワーキンググループでは、学校現場や市町教育委員会から寄せられる声を踏まえながら、具体的な負担軽減策を検討・実施してまいります。

 また、正規教員の採用数を確保することにより臨時講師等の割合を減少させることで、安定した教育環境づくりを目指します。

 これら一連の取組は単なる教職員の働き方改革にとどまらず、子どもたちが安心して学べる環境づくりにも直結しています。働き方改革により、教職員が子どもたちと向き合う時間を十分に確保し、心に余裕を持って笑顔で働けるようになることで、その笑顔が子どもたちの笑顔へとつながります。

 今後も学校現場の声に耳を傾け、笑顔あふれる学校づくりに取り組んでまいります。

※以上全文掲載


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