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地方の時代/わが府県の教育改革

子どもたち一人一人のより良い学びを実現する学校の魅力化

奈良県教育委員会
大石 健一 教育長

 
きょういく時報」25.1.18号掲載>


 令和7年の年頭にあたり、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。

 昨年公表されました全国学力・学習状況調査の質問調査において、「学校に行くのは楽しいと思う」という質問に対して、全国の児童・生徒の十数パーセントが否定的な回答をしており、本県においても同様の結果が出ています。この状況は、学校が「楽しい」と思わない子どもたちからの大事なサインとして受け止めなければならないと思います。

 私は、学校が「楽しい」場所であるためには、子どもたちの裁量が認められる機会がたくさんあり、子どもたち一人一人が自分の成長や幸福感を実感できることが必要であると考えています。


新しい「奈良の学び推進プラン」を策定

 本県では、新年度に第3期奈良県教育振興大綱が策定されます。そこで示された方針に基づき、教育委員会で新しい「奈良の学び推進プラン」を策定します。

 3つの世界遺産を有している本県の教育は、これまでも恵まれた歴史、文化、自然を学びのステージとして活用し、奈良でしかできない学びを深めることで、子どもたち一人一人が学びを発展させることを重視してきました。

 また、これらに加え、デジタル学習基盤や学校内外の教育資源を活用し、子どもたちの多様な教育ニーズに対応した、一人一人の可能性を最大限に引き出す教育を実現するよう取り組んできました。

 新たなプランにおいても、新しい時代に求められる子どもたちの資質・能力の育成やDX人材・SDGsに貢献する人材の育成に向けて、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ります。

 また、キャリア教育の充実、いじめ防止対策・不登校対策の推進、人権教育の推進等を図る取組についても、さらに進めていくこととします。


生き生きとした授業実践のために

 新しい「奈良の学び」を実現するためには、学校の魅力化を進めることが特に大切だと考えています。その中心となるのは、学校の方針や目指すべき学校像を基に編成される教育課程であり、子どもたちに生きる力を育成する授業であると思います。

 学校における授業の本質は、単なる知識の伝達ではなく、子どもたち一人一人の主体的な学びを深めることにあります。その本質に迫るためには、子どもたちが授業をとおして、学習内容をもっと知りたくなる、次々に質問をしたくなる、自分からどんどん調べたいと思える、そんな面白い授業づくりが肝心です。

 ICTの活用も、使用そのものが目的となってしまうのではなく、授業が面白くなるための効果的な手段としての活用が望まれます。

 また、子どもたちにとっての面白い授業は、学校での学びに強い興味・関心をもつことにつながりますので、教員と子どもたちとの良い関係を築く重要な要素となります。さらに、子どもたちの「学校の先生の授業が面白い」という思いは、教員と保護者との信頼関係構築にもつながると思います。では、子どもたちにとって面白い授業とはどんな授業でしょうか。

 私が考える面白い授業とは、子どもたちにできるだけ裁量を与え、自分たちで意思決定しながら学習を進めることができる授業です。子どもたちが「認めてもらえる」「楽しい」と実感し、学びたいことややりたいことがたくさんある授業です。

 その学校でなければできない教育は何かを考え、教員が継続的に改善を行うことによって創り出される生き生きとした授業を実践していくことが、子どもたち一人一人のより良い学びを実現し、学校教育の充実につながっていくものだと思います。


一人一人の未来を創る

 本県教育委員会では、教育に関わる全ての人々の日々の取組が子どもたち一人一人の未来を創るということを、学校・地域・関係機関の皆さんで共有しながら、共に頑張っていきたいと思っています。

 中でも、学校において教員の皆さんが安心して働き、意欲的に成長しながら挑戦できるよう、教育内容・学習指導の研究及び情報発信や教育環境・体制の整備等、学校の支援を行ってまいります。

 本県の子どもたちにとって、夢を育み、夢を実現できる学びが充実し、その学びが未来を切り拓く力となるよう、引き続き諸事業に尽力してまいります。

 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

※以上全文掲載


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