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大阪府の私立高校無償化がもたらしたもの
他府県の私立高校受験機会を足止め

きょういく時報」24.9.28号掲載>


 今年4月、大阪府のあらたな私立高校無償化制度がスタートした。府内の私立高校では、千里国際高等部を除く全校が、「大阪府私立高校生等就学支援推進校」の指定を受け、令和6年度から段階的な実施が始まっている。

 今春の府内私立高校の入試結果を見ると、所得制限なしの無償化が始まったにもかかわらず、募集定員を満たしてない学校も多く、100人以上の欠員となったところも10校近くに上っている。

 専願率は続伸傾向、併願の戻り率は、進学校と大学系列校で高い傾向が見られる。

 一方、大阪府の公立高校では、約2,000人の欠員が生じたといわれる。

 原因の一つには、公立高校のいわゆる“3年ルール”があるようだ。“3年ルール”に従い、上意下達式で公立高校の統廃合が行われ、公立中学校の進路指導の現場や保護者生徒らにとっては、自主的な高校の選択が、よりむずかしくなっているのではないだろうか。

 公立高校が所在する地域(学校・地元企業や自治会や自治体、保護者団体、社会団体など)の声こそが、高校存廃の判断の重要な足がかりになるはずだが。

 大阪府教育委員会では、公立高校入試日程の繰り上げを、2028年目途に予定しているといわれる。

 だが、「大阪府の私立高校の1.5次入試、2次入試の実施日程からすると、公立高校の入試日程の繰り上げは不可能に近い」(大阪府内私学関係者)との見方もある。

 また、大阪から府外近隣各府県への私立高校志願者数は、大学系列校や進学校で大きな変化はなかったものの、それ以外の私立高校では志願者が足止めされた模様だ。

 大阪府以外の全日制私立高校では、和歌山県内の8校、奈良県2校、京都府1校、兵庫県2校が現在、「大阪府私立高校生等就学支援推進校」の対象となっている。

 それ以外の地元から通学する生徒は、その自治体が実施している就学支援の対象という2本立ての授業料となっている。

 また、大阪府の就学支援推進校となった府外の私立高校においても、学費値上げ等については事前に大阪府の教育長と協議しなければならない、との規定がある。

 本来は地元の自治体に申請すべき問題であり「自治権の侵害になるのでは」といった他府県私学関係者の意見も多く聞かれる。

 学費に関する事務処理についても課題を指摘する声がある。

 私立高校各学年一斉に無償化対象とされた東京都とは異なり、大阪府の場合は各学年で段階的に実施され、対象校における事務処理も煩雑化しているようだ。

 私立高校無償化の問題は、大学無償化に先立つ喫緊の課題として、全国一律に公平性を担保したかたちで、政府サイドでの速やかな調整が求められる。(中沢)


※本紙アンケート「大阪府の私立高校無償化について」より自由記述付



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