―― 大阪府は近隣各府県に対して、私立高校の授業料無償化の推進校に参加するよう働きかけをしているようですが。
和田:保護者負担の軽減という授業料無償化の理念には異論はありません。
しかし国による修学支援金制度とともに、各自治体にはそれぞれの補助制度があります。
もちろん各都道府県の政策や財政状況によって補助額には多寡があります。
また、私立学校の学納金は、各学校が設定する「特色ある教育」を実践するために必要とする額を設定しており、これを、所在する都道府県の担当部局に届け出るシステムとなっています。
その学納金が国と自治体の補助額を超える部分については保護者負担、つまり受益者負担となっています。
―― こんどの大阪の私立高校無償化制度についてどのように感じられますか。
和田:大阪府は、私立高校の完全無償化をうたっていますが、補助額の上限を63万円とし、学納金がそれを超える学校は超過分を学校負担とする制度、いわゆるキャップ制を実施しています。
このため学校負担分は、教育費や設備投資を抑えることで捻出せねばなりません。教育内容や教育環境の劣悪化につながる恐れがあり、受け容れ難い内容だと思います。
―― 所得制限を撤廃した私立高校無償化制度を他の府県にも推進しようとする中でどのような問題が考えられるでしょうか。
和田:他府県にある学校がこの制度に参加した場合、大阪からの生徒から徴収できない分をそれ以外の生徒の授業料で賄うことになり、極めて不公平が生じることになるのではと思います。
さらに、授業料の改訂にあたっては、学校の理事会で決議する前に、大阪府の教育長と協議することが求められており、大阪府内の学校はさておき、他府県に所在する学校としては全く受け容れられません。
しかし隣接する地域の私立高校の中には、実際に大阪から通学する生徒も多く、苦慮の末、大阪の制度に参加することを決めたところもあります。
これまで「兵庫の私学は一つ」という思いの下、結束してやってきましたので、これが契機となり分断が進むことにならなければと大変危倶しています。
―― 今後どのような対応を。
和田:今後も近畿他府県の私学連合会や大阪府の連合会とも連携・情報交換しながら、ある意味において私立学校の存在意義を壊すようなキャップ制や、他府県の私学にまで統制をかけようとする制度を廃止するよう求めていきたいと思います。
―― ありがとうございました。<文中敬称略>
(前・灘中学校高等学校校長)
※2024.4より兵庫県私立中学高等学校連合会理事長に就任されました。 |