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大阪府が補助金減額・一部返還など決定

クラーク高等学院大阪梅田校・天王寺校設置の
学校法人創志学園

<きょういく時報」21.4.28号>


 広域制通信制高校を各地で連携運営し、専修学校クラーク高等学院大阪梅田校・天王寺校を経営する学校法人創志学園に対し、大阪府私学課は2020(令和2)年度の補助金交付を15%減額した。

 さらに、2016(平成28)年度から2019(令和元)年度までの補助金交付決定の一部取り消しによる補助金の返還を求める決定を行ったことが明らかとなった。

 大阪府私学課では、2020(令和2)年度の補助金減額の理由について、指導要録を作成していないなどの法令違反があったこと、連携する通信制高校の教育活動との区別が明確にされていないなど学校の管理運営に適正を欠いていたことを挙げている。

 また、2016(平成28)年から2019(令和元)年までの補助金返還理由については、連携する通信制高校の教育活動との区別が明確になされていなかったことにより、補助の対象とした経費の一部に専修学校高等課程の運営に係わる経費以外のものが含まれていたため、としている。


特区利用で開設ラッシュ


 通信制高校には、都道府県が認可する通信制高校と2つ以上の自治体にまたがり運営する広域制通信制高校、さらに運営形態別では、「公立通信制」「私立通信制」「株式会社立通信制」などがある。

 このうち私立や株式会社立では、各種学校や専修学校などとの連携や併設の場合も多い。

 2013(平成25)年に当時の第二次安倍内閣が、日本再興戦略の要として国家戦略特区制度を設け「国家戦略特別区域法」を制定し、公立学校の民営化などに道筋をひらいた。

 当時の下村文部科学大臣のもと、全国で特区を利用した民営の広域性通信制高校の開設ラッシュとなった。そこで起きたのがヴィッツ青山高校の事件だった。

 その後、民間経営の広域制通信制高校で、連携するサポート校の設置と運用をめぐる問題点が表面化したことから、全国の私立・公立の通信制高校で組織する全国通信制高校研究会(全通研)では、その質保証について会長名で声明を発表しなければならない事態となった。


自治体に指導権限なく


 このような事態が起きる背景として、広域制通信制高校の分校やサポート校が自治体を超えて設けられている場合については、その自治体に指導権限がない、というザル法的な問題点が指摘されている。

 実際にこれまで各自治体の担当部局では、保護者などから相談が寄せられても対応できない状態にせまられていた。

 今年の3月31日付けで、高校教育改革推進に係わる文科省の省令が改正され、通信制高校についても一部細目が定められたものの、安倍政権当時にスタートした教育特区については、私立中学高校などの学校法人との法律的整合性など問題点は多い。

 例えば学校法人法や関連法規では、学校の施設や財務上の規定など事細かに決められているが、広域制通信制高校に関する法律などでは、緩和措置によって諸々の設置基準の読み替えや代替が可能となっている。教育理念よりも経済的利益優先の構図がうかがえる。

 大阪府の私学審議会では、通信制高校の設置認可に関する審査基準解釈方針等が検討されている。

 その中で、①広域制通信制高校への設置認可は原則行わない。②新設の通信制高校については、開設時は狭域の通信制高校から開始し、少なくとも3年間は学校運営したうえで、適正な学校運営が行われていると認められた場合には、一定の審査基準に基づき、広域制通信制高校への変更を認める、などとしている。

 しかし、広域制通信制高校の他府県での分校などの設置基準などは自治体ごとにバラバラで、事実上の“野放し状態”が続いている。


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