文科省は2021年の大学入学共通テスト実施に向けてその対応に余念がないようだ。
大学入学共通テストにおいては、AO入試や指定校推薦の名称が「総合型選抜」「推薦型選抜」に変わり、調査書の内容がさらに重視されていくらしい。
一般入試でも、従前の筆記試験に加え、「主体性をもって多様な人々と共同して学ぶ態度も積極的に評価する必要がある」(文科省資料)としている。
「主体性」は学力の3要素の一つとされるが、「主体性」の評価とは何か、必ずしもはっきりしないという現場の声も少なくないようだ。
また、文科省は先頃、筆記試験でも学生アルバイトの使用を可能にすると明言した。教育関係者の間では、いずれこうした禁じ手が使われるのではないかという懸念も出されていたが、大学入試システムの信頼性、さらには合否の客観性まで問われることにならないか心配だ。
主体性評価のもう一つの側面である「調査書の記入事項」では、各受験生の学習歴、資格取得など6項目をあげ、学習歴の“見える化”が図られることになった。大学によっては入学許可の大きな判断材料にもなるだろう。
2022年を目標に、調査書の電子化も予定されているが、JAPAN e-Portfolio(運営管理=一般社団法人教育情報管理機構/運営サポート=株式会社ベネッセコーポレーション)との関係も含め、その詳細は、高校側および大学側にも必ずしも明確に伝わっていないようだ。個人情報の取扱い問題など、懸案が山積している。
小泉政権以来、教育行政分野での市場化の傾向が顕著だが、国はそうした教育産業への委託を行なう上で、そのプロセスや個人情報取扱い業者の責任体制の明確化、また高校教育や大学教育の独立性をどう担保していくのか明らかにしていくべきではないだろうか。
一方、今回の教育改革ではコミュニケーション重視の教育が大きく打ち出された。
小学校では英語や道徳の教科化、中高ではアクティブラーニングの導入など、限られた授業時数の中で現場の負担感が増している。
また、大阪府のように、公立高校の入試でも資格の有無や検定試験の成績が加点対象になるといったことがあり、経済格差の問題が益々無視できなくなりそうだ。
全国的に、イジメや不登校の件数が急増している。教育改革の急激な動きが、その背景に絡み合っているのかもしれない。
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