大学の人事部は、教務担当の人材をどのように見ているのだろう。先般行われたアンケートで、「専門性よりジェネラリストとして見ている」ことが明らかとなった。
アンケート調査は、豊橋技術科学大学の上西浩司入試課長が実施したもの。上西さんによると、全国の国公私立大学のうち165大学から回答があり、149校で人事異動が実施されていることがわかったという。
設置者別では国立大学が100%、公立大学86.1%、私立大学89.2%となっており、人事異動は多くの大学で肯定的に捉えられていることがうかがわれたという。
専門性を問う大学は2割弱
国大と私大を比べると、国大のほうが異動の頻度は高いようだ。
また、教務担当職員の人事異動についてはいずれもほぼ学内全てが対象となるなど幅広い。教務担当職員の職能基準については「基準がある」と回答した大学が全体の16.8%に留まり、教務担当職員の新規採用や中途採用にあたって資格要件など専門性を求める例は1校もなかったという。
最後に、教務担当職員を育成する上で、例えば「業務を離れての研修」や「業務を通しての研修」が、どのレベルの職員に有効かをたずねたところ、「ベテラン職員の方が有意」という結果になったことが紹介されている。
考察の中で上西さんは「『教務担当職員の専門性』という観点から人事部門の対応を推察すると、職員の育成について『教務の専門性』よりも『ジェネラリスト』を志向する傾向がうかがわれる」と述べている。「高度専門職の養成という視点は、あまりないと思われた」との分析結果も紹介されている。
有効なアドバイジング機能とは
一方、東京にキャンパスを持つ米国テンプル大学ジャパンキャンパスの一例をあげてみると、ここでは専門スタッフが『アカデミック・アドバイジング・オフィス』の役割を担っている。
同大学のオフィスの役割には、大きく分けて2つあり、一つは学位授与のための最終卒業判定を含む“技術的”な側面で、各学部専任のアドバイジング・オフィス機能が見られる。
もう一つの側面は、より“横断的”なものといえる。アメリカの大学ではどれほど優秀な学生アスリートでも、GPA(Grade
Point Average)(編集注:資格を得るために必要とされる評価点数)が低下したり、規定の単位数を下回ったりすれば、試合への出場停止を覚悟しなければいけない。それを防ぐ上で、横断的なアドバイジング機能は大きな役割を果たすという。
「日本の大学では、こうしたサービスも個々の先生方が兼務するケースが見受けられるが、学術的に優れている先生方が必ずしも優れたアドバイザーになれるわけではないと思います。むしろ専任専門職のアドバイザーがいることによって、先生方も効率よく業務をこなすことができるのでは」と、テンプル大学ジャパンキャンパスのアカデミック・アドバイジング・ディレクター、島田敬久さんは語っている。なお島田さんは、大学マネジメントの専攻大学院修了者でもあるという。<N>
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