―― 国による大学入試改革は、教育現場との間で着地点が模索されている段階です。“学校外教育機関”の立場から、現状をどのようにご覧になっていますか。
前田:大学入試改革は、大学教育の改善が前提になると考えます。
アメリカの場合は、SATなどのシビアな学力評価システムの上に大学の推薦制度が設けられています。
大学卒業資格についても日本よりはるかに厳しい条件が課されていることは、一般によく知られた現状ではないかと思います。
そうした中で、入学システムだけを似せようとする方向性には正直申しまして疑問を感じているところです。
誤解のないように願いますが、入学試験というものは“一発勝負”に他なりません。言い方を変えれば公平性が担保されているわけです。
オリンピック選手が本番で失敗したからといって「もういっぺんやらせてください」などと言うでしょうか。「今までの練習のプロセスを見て、優勝と準優勝を決定しましょう」という取り決めなど成立しないのです。
これを競争条理というならば、人の能力や才能を大きく伸ばす原動力は、これ以外にはないとすら思いますが。
―― 教育に関する論議の質が、年々低下しているような気がしてならないのですが…。
前田:先をしっかり見据えて論議する、行動する姿勢が持ちにくくなっているのかもしれません。
例えば、教育予算を削減するための論拠として、「少子化の現状が“そうせざるを得ない状況”を作っている」などという言い方がされたりするのも、よく考えるとおかしいでしょう。
その結果、日本の国民一人ひとりの教育水準レベルがどのような方向に導かれていくことになるのかを真剣に考え論議することを避け、形骸化した論議だけが先へ先へと進められているようにも見えます。
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