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予定されていた学術会議人事の任用拒否

2020.11.4



 1967年の佐藤内閣当時に定められた「武器輸出(禁止)三原則」。その後、三木内閣で、共産圏や紛争地域への武器輸出を禁止し、それ以外の国に対しては武器輸出を慎むといった国会決議がなされた。

 一方、米国との技術供与問題を除外(後藤田官房長官談話)を経て、今日まで日本の武器輸出禁止が、政府によって踏襲されてきた。

 その後、安倍政権のもとで2013(平成25)年2月、国家安全保障会議が新たに設置される。会議と前後して武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」が、時間をかけず閣議で決定されている。

 これを契機にそれまでの消極的武器輸出は、積極的武器輸出にとって変わられた。

 それに伴い、政府から学術会議に対し、「防衛輸出産業の振興と防衛装備品の産学連携による技術開発」が提言された。


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 日本学術会議は1950年、「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意」を表明、そして佐藤内閣当時の1967年には「軍事目的のための科学研究を行わない」との決意を表明している。

 しかし近年は、軍事と学術が各方面で接近する中、民生用に開発された技術でも軍事への転用が容易に可能となってきた。

 「学術」が「軍事」との関係を深めることで、学術の本質が失われないか――、こうした懸念を背景に学術会議では「安全保障と学術に関する検討委員会」を立ち上げている。

 2017年3月、日本学術会議は「科学者コミュニティが追及すべきはなによりも学術の健全な発展であり、それを通して社会からの負託に応えることである。学術研究が、とりわけ政治権力によって制約されたり、動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そしてとくに研究成果の公開性が担保されなければならない。軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある」との「軍事的安全保障研究に関する声明」を出している。(日本学術会議ホームページより)

 声明ではさらに、その具体的事例について次のように述べている。

 「防衛装備庁の2015年に発足した『安全保障技術研究推進制度』では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家ではなく、同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」。

 この日本学術会議の声明は、まるで戦前の軍部が当時の零式戦闘機の生産現場に乗り込み、生産の指揮をとった結果、技術者の言うことがないがしろにされ、主翼の設計変更を強引に推し進めて零式戦闘機の機能を著しく低下させたというNHKや柳田邦夫のルポを思い起こさせる。


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 先般10月21日、自民党の日本学術会議の有り方プロジェクトが日本学術会議の歴代会長を招き、話し合いが持たれた。

 席上、自民党側から、日本学術会議の軍事技術開発研究に対する協力について、不満も出たといわれる。

 しかし、そもそも政府や自民党のこのような“上から目線”の話では、日本学術会議も論議のしようがないだろう。

 これまで繰り返されてきた“予算や補助金を目の前にぶら下げ、言うことをきかせる”やり方が果たして納税者である有権者の人々の理解を得られるだろうか。

 菅総理は先日の国会答弁で「一部の旧帝大だけに偏っている人選…云々…多様性が求められる」と語ったが、会員人事は日本学術会議の内部で決めるべき問題であり、答弁内容は事実と異なる。

 多様性を語るならばそれこそ任用拒否など行わず、学術会議の人材の多様性を尊重すべきではないか。

 話は変わるが、東京大学ではこの時期に行われた総長選挙で、候補者の選考プロセスをめぐり教職員の一部から問題が指摘されたといわれる。

 最終的に東大理事・副学長・社会連携本部長・生産技術研究所教授の藤井輝夫氏の総長就任が決まったが、これまで藤井副学長が推進してきた産学連携を今後、現在の政府・自民党がどのように評価するのか注目したい。(N)


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