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“お茶の間ファシズム”

2019.4.26


 先日ハフポストが報じた記事の中で、東京新聞の望月衣塑子記者に対する官邸からのイジメについて「記者会見時の特定記者の質問を制限する言論統制をしないでください」と明確に述べた中学2年生女子の意見が、1万7,000人を超える賛同者を集めたという内容の記事を目にした。

 が、間もなくその中学2年生のブログが炎上。個人を特定する動きもあって、その女子中学生と母親は法的措置に踏み切ったという。

 ネット上の問題に係る法的措置としてはつい先ごろ、在日韓国人弁護士への誹謗中傷による訴訟で、炎上に加わった人々に損害賠償や慰謝料請求が届いた事例がある。

 さて、ハフポストではその後、女子中学生のブログの炎上に加わった人のインタビューを行っており、その内容が非常に興味深い。

 記事によると、炎上参加者の一人の伊藤さん(仮名)は、30代の家事専業者の女性で自衛隊に関心があり、保守的な考えに賛成の立場の人だという。女子中学生の件は「ツイッター速報」の投稿を通じて知ったが、そこでは「大人の女性が中学生になりすましている」といった他のユーザーたちのツイートがまとめられていたという。

 話は変わるが、昔、関東大震災で、“朝鮮人が井戸に毒物を入れた”とのデマが流れ、多くの在日朝鮮人の人々が江戸川の河原で殺されたことがあったという。

 時代は大きく動いても、”根拠のないうわさ”によって突き動かされる人々が多く存在することが恐ろしい。

 伊藤さん(仮名)は「テレビとかでも路上で一般の人にインタビューしてその意見を紹介するのも、政権に批判的な声ばかりでしょ。メディアは信じられない。」と語ったという。よく耳にする話だ。

 かつてBBCの記者と日英の政治とメディアの関係について話したことがある。BBCの記者は英国のメディアと政治の関係について、「英国の政治家たちは幸せだ、常に新聞や放送が始終監視しているので、あやまちを犯しにくい、それでも時には大きなあやまちは起きるけどね」と語っていたことを覚えている。

 英米では、ジャーナリズムをwatch dog(ウォッチ・ドッグ)=「権力の監視人」と呼び、首相や大統領は常に記者・ジャーナリストたちから厳しい質問にさらされることが常識だ。

 政権に賛成の意見ばかり掲載したり、政権の意向を忖度して記事にするメディアは広報紙的役割しかもたない。

 一方ここ数年、日本の小学校・中学校・高校の教育内容が、大きく変わってきた。根拠に基づく発言や、論理的な思考力、整理された発表力などが重視され、生徒たちもしっかりと身につけ始めている。

 中学生が、政治的にも社会的にも高い関心を示すことを、大いに歓迎したい。米国では、高校生の政治的関心の高さが「銃規制」(gun-control)などで、ホワイトハウスまでも動かしている。(N)

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