大阪府の私立高校無償化に伴う他府県への影響が、波紋を呼んでいる。
大阪府以外の近隣自治体では、京都府・滋賀県・奈良県・兵庫県で、独自の私立高校の学費助成システムが打ち出され、奏功している。
各府県のシステムで共通するのは、一定の助成額を超える差額について、保護者等の「受益者負担」が原則になっていること。また、助成には所得制限が設けられている。
大阪府のように所得制限を撤廃する「完全無償化」をうたっているところはなく、学校側が定めた授業料が、行政の決めた枠を超えればその差額は保護者ではなく私立高校に負担させるしくみも大阪府にしか見られない。
私立学校も公共性を持っており、だからこそ「国と地方自治体は私立学校の自主性を尊重しつつ、助成その他の方法によって、私立学校教育の振興に努めなければならない」というのが教育基本法の精神であり、各自治体における施策は「受益者負担の原則」とのバランスの中で実施されている。
政治的パフォーマンス優先では、本当に国民や府県民の利益となる教育政策にはなり得ない。
そもそも無償化の価値は、経済格差による教育格差が生まれにくくすることにあるのではないだろうか。
高所得者層にまで税金や私立高校の負担金が支出されることについて、多くの府民の人々はどう考えるだろう。所得制限のない無償化は、実は経済格差を助長することになる。
大阪府議会では、議員の過半数を大阪維新の会が占め、さらに首長は大阪維新の会の政党共同代表も務めている。議会と首長を独占できる状態であればこそ、慎重な行政運営が望まれるのではないだろうか。
限られた財政運営の中で、このような私立高校無償化の政策が、将来に向けて持続していけるのか、保護者や教育関係者からも懸念の声が聞かれる。<N>
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