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大学の自治,学問の自由はどこへ
国立大学法人法改正を“ステルス決議”


2023.12.15



 2020年、「10兆円規模の大学ファンド」の創設が閣議決定された。それに伴い、政府は「国際卓越研究大学」を選定。今国会で国立大学法人法の一部改訂が決議された。

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 「10兆円大学ファンド」については首をかしげる経済学者もいる。「株式・債券市場での資産運用に依拠する“大学ファンド”は、安定した(大学運営の)資金の供給源であり得ない」(国大関係者)という冷めた見方が多い。

 「10兆円大学ファンド」の投資対象、すなわち国際卓越研究大学から京都大学が外されるという珍事も起きて話題になった。

 日本のノーベル賞科学者を多数輩出してきた京都大学がなぜ ――。疑問は一気に広がった。ファンドの意味合いが、かえって浮き彫りになったようだ。

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 国大法人化以降、日本の多くの国立大学法人は、大学の運営資金を削られ続けてきた。日本の大学の国際競争力も、当然ながら弱まる結果となっている。

 京都大学 iPS 細胞研究所は、裾屋の広い再生医療分野で世界をリードしているが、かつて国によって10億円もの予算をカットされた。

 同研究所の名誉所長で、ノーベル賞の受賞者でもある山中伸弥教授は現在、ネットで研究資金の寄付を呼びかけている。

 このような矛盾した国の政策の在り方や、各種有識者会議・審議会の在り方は、世論からかけ離れた状態になっているのではないだろうか。これで国が繁栄するわけがないだろう。

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 今回の国立大学法人法改訂では、理事者が7人以上いる規模の大きな大学を特定国立大学法人とし、「運営方針会議」を設置するとしている。

 会議のメンバーは、学長選考と監察会議との協議を経て、文部科学大臣の承認を得た上で、学長が任命する、となっている。併せて運営方針委員に関する規定の整備も求められるなど、事実上、人事権を文科大臣が握ることになる。

 国立大学法人法の改訂に関しては中教審への諮問もされなかったらしい。教育・研究に“口は出すが金は出さない”という考え方が如実に反映されており、国立大学を国の方針に従わせることが簡単に出来るようになるだろう。

 違憲状態の法改正の再考が求められる。

 国大法人法改訂は国会決議されたが、その運用について引き続き注視していく必要がある。
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