東京の神宮外苑の広大な緑地で、都市再開発が進められようとしている。「貴重な東京の緑が失われる」として、作曲家の坂本龍一氏らが都知事に手紙を送ったところ「開発業者に手紙を書けば――」など、素っ気ない回答しか得られなかったという。
この100年間で、地球全体の温度は2度上がった。都会の緑地を削り、コンクリートの高層ビルが増えれば、ヒートアイランド現象が当然懸念される。
こうした中、アメリカのジャーナリストであるロバート・ホワイティングさんを発起人とする「神宮球場に想いを寄せる市民の会」が、趣旨に賛同する学生や市民とともに再開発反対の署名を集めている。署名の数は現在、12万を更新中という。
神宮外苑といえば、太平洋戦争末期、学徒出陣の壮行会場となった場所でもある。
国家総動員のもとで、それまで徴兵を猶予されていた旧制中学校、専門学校、大学から学徒が徴兵され、多くが東南アジア地域で亡くなった。
彼らの遺書ともいえる『きけわだつみのこえ』(岩波文庫)は、世代を超え、読み継がれている。
神宮外苑の一角には、九死に一生を得て帰還を果たした元学徒の人々が集めた寄附で、記念碑が建立されている。
神宮外苑の再開発が許可された背景は知るよしもないが、再開発に伴って日本の負の歴史を消そうとするのだろうか。
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