野党の強い要請にもかかわらず、なぜ与党は国会を開かないのか?
時事通信によると、今年3月31日、コロナ騒ぎの真っ最中、加藤官房長官が記者会見において、旧日本軍の従軍慰安婦問題に関し、「政府として、近年は“従軍慰安婦”ではなく“慰安婦”の用語を使っている。いわゆる河野談話は継承するが、高校教科書での従軍慰安婦問題の取り扱いについては、どのような事項を記述するかは発行者裁量に委ねられている」と語ったことが報道されている。
くつがえった「発行者裁量」
だがその後、5月10日の記者会見で、加藤官房長官は「“従軍慰安婦”という用語を用いることは誤解を招く恐れがある。単に“慰安婦”という用語を用いることが適切」と発言。「発行者裁量」とした3月31日の発言が事実上、覆ることとなった。その間、一体何があったのか。
時事通信の報道によると、「従軍慰安婦」「強制連行」の表現を「不適切」とする答弁書が4月に閣議決定されたという。
このことは、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という、教科書検定における近隣条項を、事実上破棄したものだ。
その閣議決定をうけ、文科省は、教科書会社5社に対し、6月末までに歴史教科書の記述を削除するなどの訂正申請を求め、申請に関する説明会まで行ったとされる。
これまでわが国の「従軍慰安婦論争」については、当時のGHQの資料など、軍との関連性を示す数々の証言や証拠書類も出てきている。
自国の歴史を後世に伝えていく上で、事実は事実として伝えていくことが非常に重要であり、国の責任でもある。どの国の歴史も“良い面と悪い面”を持ち合わせていることを再認識しなければならない。
2018年7月、英国のBBC放送が「日本の秘められた恥」と題したドキュメンタリーを放映したという。
ロンドン大学高等研究院に勤務する橋本直子さんは自身のブログを通じ、番組では日本における人権感覚、とりわけ「女性の人権」についての日本の後進性があぶり出されていたことを伝えている。
こうした情報は、私たち日本人が日本を国内からだけでなく国際的な視野で俯瞰できる機会を与えてくれている。
かつて“敗退”を“転退”と呼び換え、“敗戦”を“終戦”と呼び換えたように、“従軍慰安婦”を“慰安婦”と呼び換えるような姑息なやり方は、多くの日本人の目にも「日本の恥」と映るだろう。
同時に、教科書採用のために政治家の顔色をうかがい忖度しなければならないような、文科省による教科書検定とは何なのか、新しい内閣での根本的な論議が求められている。
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