生活保護の申請数が、昨年から今年にかけて減少傾向にあるという。一部報道では“景気の上向き”を理由にあげているが、本当なのだろうか。
昨年末、生活保護法の改正が行われたが、その結果、生活保護申請を受ける前の就労指導に重点がおかれることになった。
大阪市の場合、区役所の窓口で「生活保護申請」を行っても、職員による“事前指導”がまず行われ、「申請」させてもらえないのだという。
弁護士と生活支援団体で構成される大阪市生活保護行政問題調査団(井上英夫団長)によると、「DV(ドメスティック・バイオレンス)被害で離婚した30代女性が、5歳の知的障害児を抱えて生活保護を5回申請したが、その都度断られ、応対した職員からは“ソープランドへ行け”と暴言を吐かれた」という驚くべき事例も報告されている。
また大阪市では、「扶養照会」と称し、本来“縁故”とはいえない関係の人にまで扶養の可能性を打診していることも明らかになっている。中には、「自分が生まれる前に母親と離婚した相手」について、区役所から突然打診されたケースもあったとされる。
幸運にも生活保護費を受給出来たとしても、保護費から児童扶養手当が差し引かれるという厳しい現実もある。
大阪市では一昨年、北区のマンションで30代の女性とその子供が“餓死”する事件があったが、この背景に大阪市の職員の質の問題が横たわっていることもうかがわれる。
生活に困難と不安を抱え、窓口を訪れた市民に対して適切な対応ができない大阪市。調査団によるデータでは、福祉に関わる市職員の“無資格率”が48.4%にのぼり、査察指導員、福祉専門職員など本来必要とされる専門職員が市全体で約120人不足しているという。
厚生労働省は今般、国民生活基礎調査結果を明らかにした。これによると、同省が定める貧困ラインは、年収122万円以下。この年収で生活する世帯員の割合は16.1%、そしてこのラインに含まれる17歳以下の子供の割合は16.3%と、過去最高値に達した。
子供の貧困の拡大も、大阪市のような“弱者を救済できない福祉行政”と、決して無関係ではないだろう。
*参考資料(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)
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