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≪インタビュー/教育展望・前編≫

「実装化へ向け国が具体的例示を」
特性や理解度に応じた学びを推進

兵庫県私立中学高等学校連合会 和田 孫博 理事長

<きょういく時報」26.1.8号掲載>




―― 文科省が、次期学習指導要領に向けた「論点整理」を昨秋公表しました。この中で、今後の検討の基盤となる3つの基本的な方向性が示されていますが。

和田:
基本的な方向性の第一は、「『主体的・対話的で深い学び』の実装」です。

 「主体的・対話的で深い学び」は、実は、現行の学習指導要領ができる前から導入されていたアクティブラーニングを日本語化したもので、現在の学習指導要領にも盛り込まれています。

 アクティブラーニングは、“先生から生徒へ”という一方通行ではなく、生徒からも先生に問いかける、また生徒同士で色々と話し合ったり議論したり学び合ったりする、そういう学びのあり方といえます。また、先生が生徒に対して「今から何か質問しなさい」などと促すのではなく、生徒自身が疑問に思ったり、こうだという考えを持ったならば自発的に発言する、それが「主体的」の意味でもあると思います。

 また、「実装する」ということは、“どのようなやり方をすればそうなっていくのか”を明らかにすることだと理解できるでしょう。

 国内外の様々な研究や実践事例の中には、例えば教師が的確な質問をどんどん投げかける、生徒たちは調べたり考えたりして答える、その答えを聞いて他の生徒が賛同したり反論をしたりする、というような授業展開がよく出てきます。とはいえ、何もないところから生徒自身が質問を思いつくことはなかなか難しいものです。だからこそ、その単元にふさわしい的確な質問をあらかじめ教師が用意し、生徒に投げかける必要があるわけです。

 具体的には、教師が答えを言うのではなく、その授業で学んだことや自分で調べたり考えたりしたことをベースにして、生徒たちに答えさせるというような授業の流れが想定されているのだと思います。


生徒自身に気づかせる


―― 生徒自身に気づかせるような先生方の働きかけが求められると。
和田:
そうです。一方的に「ここはこうだからこうしましょう」「このように覚えておきましょう」ではなくて「これはどうでしょう?」と投げかける、あるいは生徒の反応を受け止める中で、教室の学び自体が活性化し変わっていくことが期待できます。ただし時間はかかります。そのあたりは今後の課題になっていくと思います。

 「論点整理」には「余白」という表現もあることから、指導要領を少し軽くしようという動きも見え始めているようです。カリキュラムの中で上手に「余白」を生み出し、時間のかかりそうな活動はその「余白」を使って進めていこう、との意図もうかがえます。

―― 教材研究にもかなり時間が必要になりますね。
和田:
指導要領の内容もさることながら、基本となる教科書も含め、見合う形に変えていけるかどうかが気になります。従来から、例えば国語や社会、理科などでは、より深く考えさせることを意識した項目が加えられることがあったと思いますが、そのようなコンテンツをさらに多面的に広げていくことも必要ではないかと感じています。

 もっとも、教員にこれらの作業を全て任せてしまうのでは、やはり教員も大変だと思いますし、個々の経験や能力の差が大きく出てしまう可能性もあるでしょう。こうした側面も踏まえた対応を望みたいですね。


「多様性の包摂」とは


―― 第二の「多様性の包摂」についてはいかがでしょうか。

和田:
「多様性の包摂」はとても大事なテーマです。

 生徒一人ひとりに個性があり、それぞれ特徴もあるわけですから、そういう人たちを全部取り込んでいけるような指導要領を目指して、具体的にどのような形でやっていくのか。何十人かで行われる一斉授業の枠内だけでは教育を受けられない場合も出てくるでしょうし、特徴に合わせたいろいろなパターンが必要になってきます。

 「論点整理」には、“多様な子どもたち”の具体例の一つとして、非常に特異な能力を持っている人たちのことも書かれていますが、実際にどのような教育方法が用意できるのか、今後の検討が待たれるところです。

 この点についても個々の学校や教育委員会に任せ切りにせず、例えばこういう子にはこういうやり方がある、というように具体的な形を国に示していただく必要があるでしょう。

 公立校を中心に校種なども多様化してきましたが、まだまだ一人ひとりの個性に合わせられるとまでは言えない状況です。やはりもっと具体的に示していただくことが必要ではないかと思います。

<文中敬称略/つづく>

(灘中学校灘高等学校参与・元中教審高校教育部会委員)



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