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近畿の実力私学百選

 ■和田孫博 校長先生へのインタビュー


精力善用自他共栄の精神を継ぐ
自由な校風の中で培う自律




この春、第8代校長に就任されたわけですが。御校の建学精神についてお聞かせいただけますか。

和田: 本校は昭和2年、酒造家の篤志を受けて発足しました。酒造家の親戚で、東京高等師範学校の校長ならびに講道館館長だった嘉納治五郎先生を顧問に迎え、「精力善用」「自他共栄」の建学精神が掲げられました。

 この校是はもともと柔道の極意として先生自身が考案されたものであり、本校の講堂正面に、先生直筆の校是を掲げています。

 ちなみに「精力善用」は、自らの力を最大限に使うということを意味します。自分の長所と弱点をよく知って努力すれば大きな成果につながるというこの教えは、学問への取り組みについても成り立つものと思います。

 また「自他共栄」は、どんな人でも自分一人の力で大成できるのではないという戒めの言葉です。

 今では有名なエピソードですが、バルセロナオリンピックの柔道で金メダルを獲得した古賀選手は、大会直前の練習で足に怪我をして出場さえ危ぶまれたにもかかわらず、自分を支えてくれた多くの人への感謝の思いから奮起し、足の痛みも忘れて戦ったといいます。

 先日、中・高それぞれの入学式であいさつをした際にもこのエピソードを引用し、自分を支えてくれた人たちへの何よりの恩返しは「これからもっと立派に成長していくこと」だと肝に銘じてほしい―、と生徒たちに呼びかけたところです。

 本校では中学1年生から高校1年生までの4年間、体育の時間に柔道を取り入れています。柔道というスポーツを通して心と身体を柔軟にし、また足腰の強い人になってほしいと願っています。



学校は生徒が主役

御校は比較的小規模で、高校からの募集も行っておられますね。

和田: 本校では中・高の6年間を通してクラスが持ち上がります。こうしたやり方から考えても、現状では1学年4クラスという規模が精一杯だろうと考えています。

 高校では現在、1学年の約5分の1にあたる40名の外部募集を行っています。例えば、酒造りにおいてはある時期になると麹菌をふりかけて発酵を促し、おいしいお酒に仕上げていきますが、本校の教育にとってはこの40名の生徒たちが“麹菌”的な好ましい影響をもたらしてくれており、今後も引き続き外部募集を実施していきたいと考えています。


理系の進路をめざす生徒さんの割合も高いようですが。

和田: 男子校ですので必然的にそうした傾向になるのかもしれません。ただ、文系・理系にかかわらず、大人の都合で子どもたちの才能や個性の芽を摘むようなことは慎むべきだと思います。その子の個性や最も良いところを自由に伸ばすことのできる環境を提供していくならば、やがて自分の力を活用して社会に貢献できる人へと育っていってくれるのではないかと期待しています。

 学校というところは、生徒が主役であるはずです。入学式でも保護者の方々に対して、その思いを率直に述べさせていただきました。生徒に対しては「主役である君たちは、授業においても主役であることを忘れてはならない」という言葉で、これからも一人ひとりの自覚を促していきたいと考えています。


私学の成り立ちを再確認

私学としての独自性についてうかがいたいのですが。

和田: 一番大事なのは建学の精神です。学校改革によって変化する部分はもちろんあるでしょうが、私学がどのようなスタンスで成り立ってきたのかを再確認することが大切だと思います。

 一方、私学といえどもその活動には自ずから一定の枠組みが設けられています。しかし、その中にあっても自由さを失わないことが重要ではないでしょうか。とくに生徒たちがその自由を奪われることがないようにしたいですね。

 先日、高校の入学式で新入生代表が、芥川竜之介の『侏儒の言葉』の一節を引用しながら、自由をはきちがえることなく行動することの大切さについて述べてくれたことを大変頼もしく感じました。ちょうど私自身が本校に在学中、頭髪や服装が自由になったことを思い出しますが、当時も派手な服装をしてくる者はいませんでした。



ところで私学助成については、今後さらに厳しくなることが予想されますが。

和田: 改正後の教育基本法には私学の役割がうたわれましたが、予算面では削減方向にあるのが現状でしょう。公立校においても教員の給与を見直す動きが見られますが、給与を優遇することで質の高い人材が集まるという側面もあると思います。

 また、導入が検討されているらしいバウチャー制度なども、学校間格差を広げるだけの結果に終わってはマイナスです。私学にどのような影響が出てくるのかも含めて注意深く見守る必要があると思っています。



校長とされての今後の取り組みについておたずねしたいのですが。

和田: 酒造りでは杜氏さんたちのチームが、蔵に届いた新米をその年の風味に仕上げていきますが、私どもも手づくりの良さを活かしつつ、また校長としては生徒たちが育つ様をじっくり見守りたいと考えています。


ありがとうございました。<文中敬称略>〔07.4.28号より全文掲載〕



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